[日中首脳会談]「『戦略的互恵関係』に何が必要か」
【2007年の日中関係はひとまず穏やかにスタートした。だが、それとは裏腹に深刻なアジア安保情勢に変化はなく、重い課題が山積したままだ。
フィリピンでの安倍首相と温家宝・中国首相との首脳会談で、温首相は4月訪日の意向を表明し、安倍首相の今年後半の中国訪問も招請した。中国首脳の来日は、2000年10月の朱鎔基首相以来になる。
これを機に、日中間の首脳対話が確かな軌道に乗るのかどうか。
安倍首相は、今回の首脳会談の冒頭で「戦略的互恵関係を有意義なものにしていきたい」と表明した。昨秋の訪中時に合意した「戦略的互恵関係」とは、両国の「政治」と「経済」の両輪を作動させて日中両国が共通の課題の解決にあたることだろう。
日中2国間関係の問題にとどまらず、地域の深刻な安保環境の改善にも取り組まなければならない。そうした観点から目下の最重要課題は、「核保有国」として核武装化に走る北朝鮮の企図をくじくことにある。
北朝鮮に核放棄を求める6か国協議は昨年暮れ、何の成果も出せないまま終わり、その再開のめどもたっていない。
安倍首相は、6か国協議の議長国である中国が、北朝鮮に対し「態度を改めるよう促して欲しい」と求めた。温首相は「6か国協議での協力を推進したい」と応じた。中国がどこまで北朝鮮の説得に動くのか、それが両国の「戦略的互恵関係」の将来を占う指標となる。
今回、日中首脳会談の後、日中韓首脳会談が2年ぶりに再開された。会談では3か国の外務高級事務レベル協議機関の創設が決まった。3か国の間でも、対話強化の枠組みが整った形だ。
ただ、日中韓3か国の共同声明では、朝鮮半島の非核化に向けて北朝鮮が「具体的かつ効果的なステップ」をとるよう要求したものの、踏み込んだ言及はみられなかった。拉致問題については「人道上の懸念に係る問題への対処の重要性」との表現にとどまった。
やはり日中韓の立場に違いがあるからだろう。
一連の欧州首脳との会談で、安倍首相が強調したのは、北朝鮮に国際的な圧力を加え続けることの重要性だ。
北朝鮮に対する包囲網の形成に欧州の参加も必要だ。だが、最も大事なのは、緊密な日米関係を基礎にしたアジアの日中韓3か国の連携だ。
これをどう実現するのか。安倍首相が、今後の対中韓外交を展開していくうえで全力を傾注すべき課題である】
日中韓会談 やっと足場が復活した
【日本と中国、韓国の首脳がフィリピンのセブ島で、2年2カ月ぶりに会した。
ぎくしゃくし続けた日本の近隣外交だが、安倍首相が就任から間を置かずに北京とソウルを訪ね、首脳往来再開の足がかりをつくった。そして日中韓首脳会談の復活だ。
日本のアジア外交を立て直す足場が、ようやく整ってきた。
3首脳会談を開けなかった間に、3カ国を取り巻く環境は大きく変わった。経済の相互依存はさらに深まり、人や文化の交流が格段に進んだ一方で、ナショナリズムもそれぞれの国内で高まった。
最大の変化は、北朝鮮をめぐる危機の深化だ。北朝鮮はミサイル発射と核実験を強行した。6者協議は再開されたものの、進展の糸口をつかみかねている。
「朝鮮半島の非核化に向け具体的、効果的なステップを求める」。3首脳はきのうの共同報道声明でそう訴えた。
北朝鮮の動きに最も直接の影響を受ける近隣3カ国である。緊密に連携して危険を封じ込めていくのは当然のことだ。
だが、日本が強硬姿勢ばかりを前面に出す一方で、中韓は北朝鮮を刺激しないよう気を使う。そんな違いは歴然としているが、交渉で解決に導くという道筋では固く一致しているはずだ。
3カ国が意思を通じ合っているということだけでも、北朝鮮や米国、ロシアに対して意味を持つ。この首脳声明をきっかけに、交渉の現場での協調をさらに強めていくべきだ。
投資協定の交渉を始めることや、高官レベルの外交定期協議を行うことも合意された。三つの国が一緒に取り組むこうした枠組みが広がることを歓迎する。
日中韓3首脳の会談は99年から始まった。当時の小渕首相が熱心に働きかけ、金大中大統領が全面的に後押しして実現した。当初は朝食会の形をとり、それも政治絡みの話は抜き、という腫れ物にさわるようにして産声をあげた。
それが03年には、3カ国の幅広い協力が「東アジア全体の平和、安定、繁栄の実現に貢献する」とする共同宣言を出すまでになった。
そんな歩みに冷水を浴びせたのが、小泉前首相の靖国神社参拝だった。日中韓どころか、日中や日韓の首脳会談さえままならない状況になってしまった。
だが、アジアにおける日中韓の存在感は、経済をはじめとして圧倒的である。
北朝鮮問題に限らず、鳥インフルエンザなどの感染症や環境問題など、地域で取り組まねばならない課題は山積している。3カ国の協調は歴史の必然であり、後戻りさせている余裕はないのだ。
もともと隣同士の関係は、複雑な歴史が絡み合って難しい面がある。あつれきがあるからこそ、首脳同士のつながりや信頼を大事にしなければならない。
その点で、中国の温家宝首相の4月訪日が決まったのはよかった。まだぎこちなさの残る日韓間も、早く追いついてほしい】
昨日行われた日中韓首脳会談、経済問題や北朝鮮問題が絡むだけに、もう少し多くの新聞が社説などで食いつくものかと思っていたのだが、主要な新聞社でこの会談の話を取り上げたのが読売と朝日くらいだったのは、ちょっと意外な感じがした。
それはさておき、片や「立場の違い」を念頭に置き、あくまで戦略的な枠組みを意識しながら国家間の連携を行っていこうと主張する読売と、片や極東アジア三ヶ国の連携は世界にとっても重要であり、その信頼を妨げるような事はとにかくしてはならないと主張する朝日。一独立国家として、日本がとるにふさわしい道はどちらですかな?
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