命を愚弄するメディア
【カンカンカンと、警報音がひっきりなしに鳴る。目の前を通過する急行電車の風圧とごう音がすさまじい。自殺志願の女性を止めようとして、警視庁板橋警察署常盤台交番の宮本邦彦警部(53)=二階級特進=が殉職した東武東上線ときわ台駅の現場を見てきた▼交番は踏切のすぐわきにある。遮断機をくぐって毎朝夕、駅北口へ向かう利用客には、立番(りつばん)の宮本警部は顔なじみだったのだろう。死亡が伝えられてから、通夜が行われた十四日夕までに、献花や記帳に交番を訪れた人は二千七百人を超えた▼事故が起きたのは六日午後七時半。いったん踏切内に入って保護された女性は説諭中に交番から飛び出した。「死んでもいい」「私が悪者になってもいい。だから入るな」と手を広げて制止する宮本警部を振り切って、女性は再び下り線路内に▼この時間帯、電車は一分間隔で通過する。宮本警部は女性をホーム下に抱え込んで引き入れようとしたが、間に合わず、レールの間に倒れ込んでかばった。どれほど勇気がいったことか▼年間自殺者が八年連続で三万人を超える格差社会の最前線で救われた命と、その身代わりとなった警察官。安倍首相が弔問のために板橋署を訪れたのは当然のことだ。緊急叙勲を検討中というが、政治がまずなすべきは、こうした自殺志願者を少しでも減らす努力だろう。それが尊い犠牲に報いる道だ▼一九九二年二月、勤務中に刺殺された警視庁東村山署旭が丘交番の大越晴美警部補=当時(42)=の事件が同じ十四日時効となった。こちらも無念だ】
注目すべきは太字の部分。何やら「今回の事件は格差社会が背景にあり、安倍首相には警察官の死に対して責任がある」とでも言いたげな文章だが、その論理を形成するために最も重要なポイントである「女性が自殺しようとした原因は格差社会」という決め付けはどのようにしてなされたのか。
そのような報道はこれまで聞いた事がないが、マスメディアはこの件に関して我々の知らない情報を握っているのだろうか。そうでなければこの文章は、政治批判をしたいがために憶測で物を語るという、メディアにあるまじき行為の証である。あと格差社会も、何も安倍首相が一人で産み出したものではない。そこんとこどう考えているのだ東京新聞は。
文章の最後は「無念」という言葉で締めくくられているが、他人の死すら自分の主張の為に利用せんとするハゲタカ同然の連中が、本気でそんな事を考えているかどうかは大いに疑問である。ハゲタカの方がまだ可愛い。
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