「即興政治論」投票動向に詳しい若手政治学者菅原 琢さん Q 民意の揺れが大きい理由は?
【ここ数年、民意の振れ方が大きくなった気がします。安倍晋三前首相は国民の7割の支持を得て誕生しながら、わずか1年で6割の不支持で退場しました。福田康夫首相の支持率も目が離せません。なぜ世論の振幅が激しくなったのか。有権者の投票行動などに詳しい東京大特任准教授の菅原琢さんに聞きました。記者・清水 孝幸
清水 一昨年の郵政解散・総選挙で自民党が歴史的大勝をしたかと思ったら、今年の参院選は民主党が圧勝。民意の揺れをどうみますか。有権者は変わったのですか。
菅原 有権者の性質とか行動パターンは大きく変わっていない、というのが私の見方です。有権者がある政党に投票し、その後、突然、別の政党に投票するパターンは昔からありました。
激しく見えるのは、民主党という巨大野党の誕生で、以前より自民党が負けやすくなったからでしょう。衆院に小選挙区制が導入され、民意のちょっとした動きで議席数が大きく変わるようになったこともあります。
もう一つは、報道機関などの緊急電話世論調査が増えたこと。何か出来事が起こったら、すぐに調査をやる。すると、有権者もテレビを見ているところに電話がかかってきて、答えるのですから、月一回の定例調査だけのときよりも、当然、乱高下するわけです。
清水 有権者はムードやイメージで動くともいわれていますよね。
菅原 無党派層が増え、政党を評価する手がかりの一つとして、そういったものを利用することは確かにあります。
でも、有権者がムードで決めているかといえばそうではありません。小泉(純一郎元首相)さんを支持した層は「感動した」なんていうセリフで動いたわけでなく、改革をしてほしいと一票を投じたのです。少なくとも世論調査では、理由づけはきちんとなされている場合の方が多いです。
ワイドショー的な報道の影響で、有権者の方が揺れていると錯覚しがちですが、有権者の意識は「私はこうだから、この人に入れる」と変わっていません。
清水 めまぐるしく変わる政治に有権者が反応しているだけと。
菅原 政治が動いているというより、有権者をつかめていないという意味で、だらしないということですかね。
小泉さんから安倍さんに代わったときに、それが極端に表れました。小泉さんは一応、改革の方向性を示して動いていた。安倍さんになって、有権者は彼も当然やるだろうと期待し、瞬間風速的に高い支持率が出たけど、見ていると何もやらない。郵政造反議員の復党まで見せられ「ああ、この人は違うんだ」って。有権者はめざとく「この人はやる、やらない」と判断しています。
清水 有権者がリーダーの業績で判断しているなら、福田首相が誕生した直後、内閣支持率が高かったのはなぜですか。
菅原 よく知らない人に対して、否定的な意見はなかなか出しにくいものです。初対面の人にいきなり「あなた、嫌い」とは言わないでしょう。まだ仕事を始めていない首相にも、人は同様の反応を見せます。政治学では内閣初期の支持率の高さを「ハネムーン効果」と言ったりします。
それでも、派閥の領袖が総理になっていたときは、初めから支持、不支持がある程度、はっきり出ていました。それが、それまで何をしてきたか、よく分からない人がぽっと出てくるようになり「様子見支持」が多くなりました。けど、それは何かあると、すぐ引っ込める支持です。
清水 だとすると、福田さんの支持率は何かあったら急落する?
菅原 もちろんそうです。防衛省の問題がどんどん出てきて、これからどうなるか。
清水 民主党の小沢代表の辞任騒動の影響は。
菅原 このままなら決定的な影響はないと思います。短期的に支持率の低下はあっても、長期的には落ち着いていくのではないですか。
清水 次の衆院選で民意はどう動きますか。
菅原 難しいのは、福田内閣がまだ業績を出していないことです。もし(衆院選が)来春なら何もしていない状態で選挙を迎える。そうなると、福田政権への評価より、どっちの政党に政権を任せた方がいいのかで動くと思います。
清水 有権者にとって、何が政権を任せる基準になるのですか。
菅原 いまの有権者は改革をやってほしいという人が非常に多い。それが基準になります。夏の参院選では、改革をしてほしい人が自民を離れ、民主に流れました。次はその人たちがどちらを支持するか。それが福田自民党と小沢民主党の勝負になります。
× × ×
菅原さんには若手政治学者として、随時、登場してもらう予定です。
すがわら・たく 1976年東京都生まれ。東京大卒。同大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。同大先端科学技術研究センター特任准教授。専門は政治学(政治過程論、日本政治)。選挙分析や国会に関する論文多数】
>ワイドショー的な報道の影響で、有権者の方が揺れていると錯覚しがちですが、有権者の意識は「私はこうだから、この人に入れる」と変わっていません
それを言うためには「有権者の判断材料となる情報が公正に伝えられている」というのが大きな前提となるはずだが、実際は果たしてどうなのやら。毎日新聞は「民主の小沢代表が山田洋行から総額600万円の寄付を受けていた」なんてニュースを流していたが、頭狂新聞は自分たちに都合の悪い情報を隠蔽したりしていないかな?まぁ答えは聞くまでもないが。
>いまの有権者は改革をやってほしいという人が非常に多い。それが基準になります。夏の参院選では、改革をしてほしい人が自民を離れ、民主に流れました
これも同様。これまで政府が行ってきた改革の中で「抵抗勢力」と言われ弾かれた個人や団体が、今や民主の側に回って連中の下支えをしているという実態は、明らかにはなっているもののほとんど報道されていない。今民主を勝たせてしまう事は、これまで痛みを伴いながらも少しずつウミを出してきた病巣を、再び体内に取り込んでしまう行為に他ならないのだが、それを知りながら隠蔽し続けるマスゴミって奴は本当にクソ以下だよな。
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