派遣法改正―労働者保護への方向転換(朝日新聞社説12/28付)
【昨秋以来の世界不況は、派遣労働など非正規雇用のもろさを見せつけた。
それを受け、長妻昭厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会が議論していた労働者派遣法改正案の骨格が、きょうにもまとまる。
その概要はこうだ。
仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型」派遣は、通訳のような専門性の高い26業務や高齢者派遣などを除き、原則禁止にする。
「派遣切り」で大量の失業者を生んだ製造業への派遣は、派遣元と長めの契約を結ぶ見込みがある「常用型」に限る。最も不安定な雇用の形である「日雇い派遣」も特定の業務を除いて禁止する。
偽装請負のような派遣先の違法行為があった場合に、派遣先との直接雇用があったと認める「みなし雇用」の規定も盛り込んだ。
経済界などには異論も根強い。
登録型派遣や日雇い派遣を禁止すると、企業が使いづらくなり、かえって失業が増えるという主張がある。製造業派遣を規制すると、海外に生産拠点を移す企業が増え、雇用が失われるという議論もある。
しかし、だからといって、景気変動の一番のしわ寄せが非正社員にいく構造を放置したままでいいだろうか。
派遣法はこれまで改正のたびに雇用の流動化の面ばかりを拡大してきた。今回、それを労働者保護の方向にかじを切った意義は大きい。
まだ不十分な点も残る。
期間が1年に満たない雇用も常用型とされる恐れがある。みなし雇用も、直接雇用が認められるのは元の派遣会社との契約期間だけ。派遣先の負う責任が軽すぎないかという疑問もある。登録型や製造業派遣の原則禁止の実施も、公布から3~5年先になる。
経営側の言い分も含め、通常国会でさらに議論を深めてもらいたい。
今回の法改正が問題のすべてではない。政府をはじめ社会全体で取り組むべき根本的な課題が残されている。
正社員と非正社員との待遇格差がまだあまりに大きく、派遣を含む非正規雇用全体が多様な働き方としてきちんと位置づけられていないという点だ。
同じ仕事をすれば雇用形態にかかわらず同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」が、欧州では当たり前だ。すぐには導入できないにしても、実現に向けて努力していくべきだろう。
非正社員の契約更新の回数や期間にも上限を設け、雇用の「調整弁」頼みの経営が必ずしも得にならないようにしていく。非正社員の技能を引き上げ、生かす仕組みも考えたい。
失業率は相変わらず5%台だ。不況のたびに大量の失業者が生まれる構造を改めない限り、社会は安定しないし、産業の活力も生まれない】
派遣法改正 労働者保護の第一歩だ(東京新聞社説12/28付)
【懸案だった労働者派遣法の改正内容が固まった。日雇い派遣だけでなく製造業や登録型も原則禁止とする。問題が多い派遣制度にやっと規制がかかる。政府は引き続き労働者保護を推進すべきだ。
これも政権交代の効果だろう。自公政権下で廃案となった派遣法改正案は日雇いだけを禁止にする緩やかなものだった。今回は民主、社民、国民新三党の連立合意に基づき派遣労働者の保護を強く打ち出した。
労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)がまとめた改正案の骨格は、(1)仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣(2)常用雇用型を除く製造業派遣(3)一日単位から二カ月以内の期間の派遣-をすべて原則禁止とするものだ。
また禁止業務に派遣したり、いわゆる偽装請負などの違法があった場合、派遣先企業は派遣労働者に直接雇用契約を申し込んだとみなす規定も盛り込まれる。施行は公布日から半年以内だが経営側に配慮して登録型は五年間、製造業は三年間の猶予期間を置く。
一連の内容は評価できる。「コンクリートから人へ」と人間重視の政策を掲げる鳩山政権にとって同法改正は真骨頂となろう。
法改正の発端は昨年前半に相次いで発覚した大手派遣会社による違法行為である。昨秋の金融危機では電機メーカーなどで“派遣切り”が続出。失職と同時に住む部屋からも追い出される人が続出した。そして「年越し派遣村」出現は世間に衝撃を与えた。
もうひとつの理由は低所得者層の急増である。年収二百万円以下の働く貧困層(ワーキングプア)が一千万人以上もいる。消費低迷だけでなく少子化、自殺・犯罪増加の一因とされるなど、国としての抜本対策が迫られている。
企業側は派遣禁止は労働者の雇用機会を奪う、と反発する。だが十一月の完全失業率が5・2%、有効求人倍率は〇・四五倍という現状で労働者が「働きたい時に働く」ことができるのか。
賃金コストが高まれば企業は海外へ移転するとも強調するが、海外移転は消費地との直結や円高対策の面が強い。
経営者は直接雇用と長期雇用の原則に立ち戻るべきだ。技術の継承だけでなく、職場の一体感醸成で生産性向上や労働災害の防止も図れる。労働者をモノ扱いしては企業の将来性はない。
政府は派遣労働者に続き、契約社員など非正規雇用労働者全体の待遇改善に努力すべきである】
どうして左巻きってのは「派遣を禁止すれば全ての労働者が救われる!」などという妄想を抱いちゃってるんでしょうかね?派遣だろうが何だろうが、景気が順調で仕事がたくさんあれば、クビを切られる事なんてありゃしませんのに…。
そもそも、何故企業側が派遣労働者のような安い労働力を求めているのかを考えれば、それは不況やデフレに対応するため、国際競争力を維持するためなどといった様々な理由があるワケです。政府がそれらの問題を解決せず、派遣労働だけ禁止にしてみたところで、企業側が派遣を正社員に取り立てたりする事はほぼあり得ないでしょう。政府が雇用対策を打とうとするなら、同時に企業側に雇用への意欲を持たせるための対策、すなわち景気対策を打つ事が必要不可欠だと思うのですが、今の鳩山政権は経済関係の能力がからっきしですからねぇ…。
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