風知草:「剛腕」の先にあるもの=山田孝男
【いま進行中の民主党代表選挙は、小沢一郎の復権を問う権力闘争である。小沢の応援団はこう問いかけている。
「クリーンで非力な首相と灰色でも剛腕の首相とでは、どちらがマシだろうか」
まさかの出馬表明から10日たち、剛腕待望論がジワジワと広がっている局面だ。
剛腕とは何だろう。議論百出の予算編成に介入し、たとえ公約違反でも、ガソリンの暫定税率維持でまとめてみせる力である。自治体や業界の陳情窓口を自分に集中し、政策調査会を廃止する力である。
ナンバー2でありながら、気に入らなければナンバー1の面会要請さえ拒み通す傲岸不遜(ごうがんふそん)も加えよう。菅直人政権の非能率に対する官僚の不満、民衆の失望に乗ずる形で、小沢のそういう資質に好意的な視線が集まり始めている。
だが、その剛腕が、これから先の国政をどう導くかという点は、もう少し注意深く検討されなければなるまい。
たとえば高速道路だ。代表選出馬に合わせて小沢が発表した政権構想には、こんなことが書いてある。「高速道路の建設は今後、国が建設費を支援して都道府県が自ら行うことのできる仕組みを創設する」
先週の日本記者クラブの討論会(2日)でも、小沢は地域活性化策としてこのアイデアを誇り、「大手企業ではなく、地方の業者が受注できるようにしたい」と力を込めた。
これをどう読むか。長年「土建政治」を見てきた道路官僚の解説が興味深い。
「昔はゼネコンからの政治献金を(自民党の)派閥の長が集めて議員に配るシステムでしたが、今は難しい。一方、小選挙区制の下では支持者は地元企業中心です。選挙支援の見返りとして、地元への発注を増やす必要がある。小沢さん、政治と業界の関係の変化に合わせて、新しい仕組みをつくろうとしているんだと思います」
小沢構想は、民主党の選挙戦略としては「新しい政治」かもしれないが、田中角栄流の利益誘導政治を継承するという点において「古い政治」そのものというべきだろう。
なるほど、高速道路建設は地域活性化策には違いないが、土建重視の景気刺激で21世紀が開けるか。それをもって内需主導型成長の希望といえるか。このことこそが問われなければならないと私は思う。
剛腕をふるってムダを省くという小沢の財源論は、案外平凡で説得力に欠ける。先週の論戦を通じてそのことが見えてきた。普天間の打開に秘策ありと思わせながら、実は白紙だったこともはっきりした。
その点は鳩山由紀夫政権と変わらない。小沢は鳩山体制で幹事長を務め、参院選前、政治資金疑惑への批判に応えて辞任した。3カ月後の今、「政治とカネはもうおしまい。大事なのは脱官僚だ」と躍り出て、首相に王手をかけている。
◇
天下にケジメを示した幹事長が、アッという間に首相候補に返り咲く不思議。頼りない菅と疑問だらけの小沢しか選択肢がない不毛。経験不足の新米議員たちが決定権を握っている不安。論戦を素直に聞けない理由がいくつもある。
日本の首相を決める代表選の投票日は14日。有権者(民主党の国会議員、地方議員、党員・サポーター)は、「剛腕」の意味を、よくよく考え抜いていただきたい】
現役毎日新聞政治部専門編集委員の山田氏のコラム。下から2行目なんかは変態にしてはいちいちもっとも、「都合の悪い事は何も見えません聞こえません」という民主支持者以外の日本国民の多くが抱いているものなんじゃありませんかね?
ニュースの匠:またぞろ「政治とカネ」=鳥越俊太郎
【民主党の代表選挙が始まりましたが、またぞろ「政治とカネ」という言葉がそちらこちらで飛び交う、と思うとうんざりしますね。なぜかって? それはその言葉を使っている当人が「政治とカネ」の事実関係について正しい知識もなく、ある種のレッテル張りに使っているケースが多くて不愉快だからです。
そんなある日のこと。テレビ朝日「スーパーモーニング」でちょっと面白いシーンを目撃しました。金曜日でしたので私は出演していない日です。民主党の国会議員2人が出席していて、そのうち1人、生方幸夫議員が「政治とカネ」の話を持ち出し、小沢一郎氏の批判を始めました。私はあーあ、またか、と思いながめていると、この日のアンカー役、山口一臣・週刊朝日編集長が生方議員に向かって問いかけました。「『政治とカネ』とあなたは言うが、被疑事実は何なのか知ってるんですか?」
生方議員はムニャムニャ分からないことをしゃべっていると、山口編集長はズバリと喝破しました。それはまさに“喝破”の名に値する寸言でした。
「生方さん、あの事件は虚構ですよ」
スタジオは一瞬静まり返り、話題はすぐ変わりましたが、“虚構”という言葉がコダマのように私の頭の中で響きました。私もそう思うからです。捜査のプロ・東京地検特捜部が必死になって捜査して出した結論が「不起訴」。検察審査会は“市民目線”と新聞では持ち上げられてはいますが、しょせん素人の集団。もし強制起訴になれば小沢氏も堂々と受けて立てばいいだけの話なのです。
それにしても小沢氏が代表選出馬を表明した翌朝の新聞各紙の社説見出しはひどかったですねえ。「政治とカネ」の言葉に惑わされているんですね。「小沢氏出馬へ あいた口がふさがらない」(朝日新聞)……だって。あいた口がふさがらないのはこっちだよ。新聞は小沢氏が嫌いらしい】
元毎日新聞記者の鳥越俊太郎のコラム。現役の方のコラムを読んだ後だと「ムニャムニャ分からないことをしゃべっている」ようにしか思えないんですが…もう少し論理的な話はできないものですか?
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