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2010年10月19日

東京新聞コラム10/19~「非」をしっかり吟味せよ

東京新聞「筆洗」10/19付

【ようやく沈静化ムードが漂った日中関係に、またきしんだ音が大陸の奥の方から聞こえてきた。中国四川省などで三日連続で起きた大規模な反日デモは、中国人が経営する日本料理店を襲撃するなど一部が暴徒化した▼本紙特派員によると、綿陽市のデモは地元の若者たちが計画。「釣魚島(尖閣諸島)は中国のものだ」と叫ぶ数百人規模の行進は、二、三万人規模に膨れ上がり、警察当局も制御できなくなった▼群衆の一部は日系の商店などを次々に襲った。「同じ中国人じゃないの」と泣きながら懇願した日本料理店経営者の女性の話が胸を打つ。暴徒化した多くは、就職先のない若者など貧困層の人々だという▼中国では、デモや集会は当局への事前申請が必要で、民主化要求などは許可されない。後からデモに合流した若者たちは、政府に対する不満のはけ口として、「反日」に便乗した面があるのだろう▼<複雑な問題に単純な答えはありえない>。そう語ったのは米国のカーター元大統領だ。尖閣問題で見せた強権的な態度も、内部に抱えた大きな矛盾を隠すためと考えるなら、納得はできないが理解はできる▼日本を抜いて世界二位の経済大国になろうとする隣国と、付き合いをやめることはできない。厄介なことではあるが、対等で良好な関係を築くには、双方が感情的な反発を抑える努力を続けるしかない

 この「双方が感情的な反発を抑える努力を」という表現、マスコミがこれを使うのって大抵は「中国や韓国が相手の時」なんじゃないかという気がしないでもないのですが、しかしこういう「喧嘩両成敗」的な考え方は、「問題の根本はどこにあるのか」という吟味を完全に放棄しているものじゃありませんかね?

 尖閣諸島は歴史的に見ても国際法上でも、明白な日本国の領土です。その裏付けとなる資料、例えば1920年代に中華民国から現沖縄県石垣市に送られた、尖閣諸島が日本の領土だと明記されている「感謝状」なども存在しています。昨日のエントリでも「合理的な理由があるかどうかで社会的判断は異なる」という話をしましたが、これらに基づく日本の主張は「感情的な反発」などでなく、やはり合理的なものであると言う事ができましょう。しかし、中国や台湾の主張には、そのようなものは一切出てきません。

 一方は筋の通った話をし、もう一方はそうでない話をして両者が対立する。非がどちらにあるかは明白なのに「解決に向けて双方が努力せよ」とは頭が悪いとしか思えず、またそれで「対等で良好な関係を築ける」とも思えません。半島・大陸(ロシア含む)の「他国の領土や権益を実力で奪う」などという前時代的で歪んだ考え方に対して、真っ当な主張をぶつけられるような政府あるいはメディアでなくては、一般の国民の支持はどんどん失われていくものと関係者は心得ておくべきでしょう。あと蛇足かも知れませんが、「『喧嘩両成敗』という概念は、ほとんど日本でしか通用しない」という事も最後に述べておきましょうか。

【関連】尖閣ビデオ、衆院予算委提出へ…公開は秘密会も

 今回の一件の大きな証拠であるビデオの国会提出がようやく決まったようですね。主権者である国民にも早いとこ開示して下さいよ、次の選挙において、大きな判断材料になるかも知れませんので(笑)。

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