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2010年10月 6日

東京新聞社説10/6~闘わなきゃ、現実と

日本と中国 闘えば共に傷がつく

日本と中国の首脳が会談し、関係改善を申し合わせた。今後の展開は楽観できないが、互いに依存する両国が闘えば共に傷つく。教訓をかみしめ、対抗措置の長期化や無用の挑発を避けるべきだ。

 菅直人首相は四日夜(日本時間五日未明)、ブリュッセルで開かれたアジア欧州会議(ASEM)の会場で中国の温家宝首相と出会い、約二十五分会談した。

 双方は尖閣諸島の領有権問題では、それぞれの立場を主張したが、事件による関係悪化を「好ましくない」とし、政府間だけでなく民間レベルの交流も復活させる方針で一致した。中国は国営新華社が両首脳の顔合わせを「言葉を交わした」と報道し正式な会談と認めていない。

 中国漁船船長の拘置に対する事実上の対抗措置として軍事管理区域の撮影を理由に拘束した建設会社「フジタ」の社員、高橋定さん(57)はまだ解放されていない。

 中国が独占するレアアース(希土類)をはじめ、対日輸出入の制限や関税手続きの強化も終わってはいない。しかし、両国首脳が関係改善を目指すことで一致した以上、高橋さんを一刻も早く解放し対抗措置を撤廃すべきだ。

 今回の事件は日中双方に身にしみる教訓を与えた。日本が中国経済に依存を深めている現実を顧みず、むやみに強硬な手段に出れば中国が「一つ一つ蛇口をしめるように」(外務省首脳)対抗措置を取り日本は打つ手がなかった。

 尖閣諸島の領有権問題を顕在化させただけでなく日本は圧力に弱い国と見くびられ北方四島の返還などにも悪影響を及ぼした。

 外交的には中国は勝者に見えるが、貿易上の対抗措置が長引けば日本からの輸入部品に頼る産業には大きな影響が出ただろう。

 国際的にも国益のためには手段を選ばない国というイメージを広げ、国内では対外強硬論が力を得た。それは中国の発展に欠かせない平和的な国際環境を中国自身が損なうリスクを高めた。

 隣り合う日中両国が闘えば共に傷つくが、平和共存できればお互いに利益をもたらす。

 両国がそれを学び今後、真剣に「戦略的互恵関係」を目指すなら、今回の事件もマイナスばかりではないだろう。

 そのためにも両国の政治家には見識と戦略眼を求めたい。「悪(あ)しき隣人」(枝野幸男民主党幹事長代理)などとののしり敗北のうっぷんを晴らすことは感情的対立をかきたてる最悪の姿勢である

 「互恵」とか「共存」といった言葉は、実に日本的であり、またお花畑の好みそうなものです。しかしこれらは、対等の位置にある2者の認識が一致して、はじめて実現する概念です。中国という国家を考えた場合、果たして彼らは「他国とそういう関係になろう」と、本気で考えていますでしょうか?

 「中国」という名前は、「世界の中心にある国」を意味します。彼らは有史以来、周辺諸国をその力でもって従属させ、19世紀半ばから一旦衰えはしたものの、永らく東アジア地域の王として君臨してきました(蛇足ながら「朝鮮」という名前は、「貢ぎ物の少ない国」を意味するとかしないとか?)。そんな歴史を持つ国が、他国と協調し、互いに利益を得ようというメンタリティを持ち合わせているのかどうか。尖閣諸島を巡る中国の一連の動きを考えれば、その答えは既に出ているものと思うのですがね…。

 歴史的にその所有権が明確であるところの他国の領土を「我が国の領土である」と高らかに唱え、自国の利益のためなら他国との摩擦もお構いなし。国連の常任理事国でもある、世界に冠する大国でありながら、その責務を果たさず、国際法にも従わない。これを問題と言わなくて何とするのでしょう?「感情的対立がどうたら~」という以前に、むしろ対等の関係であればこそ、悪は悪、間違いは間違いだとハッキリ指摘できなければおかしいではありませんか。「殴られようが何されようが、相手を傷つけるくらいならヘラヘラ笑って相手に従っていればいい」などというのは、「戦略的互恵関係」とは言いません。

 断言できますが、日本がいかに求めようと、日中間において私たちの認識するところの「互恵」とか「共存」といった関係は成立するものではありません。中国が好意的な反応を返したとしても、それは単なるリップサービスか、あるいは裏に別の意図があるものと考えるべきです。まぁ中国の姿勢は、やり方はともかく国益を追求する国家の姿勢としては間違っていないものと言えますが、そういう国家と望む望まないに拘わらず付き合っていかなければならないとすれば、そうした点は「チャイナリスク」としてあらゆる場面に想定していく事が必要でしょうね。

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