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2010年11月19日

東京新聞コラム11/19~不穏当に決まってるだろ!

東京新聞「筆洗」11/19付

【「面白いジョークの多くは、葬式で聞いた」とは、確か、米国の名女優シャーリー・マクレーンさんの言葉だ▼分かる気がする。厳粛であるべき時に厳粛でないことを言う。そういう、ある種の不穏当さがジョークの本質にはある。場を支配する空気や良識からはみ出した視点と言ってもいい。けれど、それも度が過ぎればシャレにならない。その加減が難しいところだ▼さて、柳田法相が地元会合で語ったことに、野党議員らが激怒している。国会答弁について「法相は『個別の事案については答えを差し控える』『法と証拠に基づいて適切にやっている』の二つを覚えておけばいい」とやった、あの発言である▼閣僚がそんなことを言うのは不穏当。良識を疑う。いや、まったくごもっとも。でも、法相はだからこそ言ったのではないか。「いつも誠心誠意答弁している」とでも言っておけば誰からもしかられない。けれど、嗚呼(ああ)、それではジョークにならぬ▼結果から見れば、良識からのはみ出し加減が過ぎたか。でも、こういうことを言うのは不穏当かもしれないが、野党議員もジョーク一つにそれほど目くじらを立てることはない▼ただ、国権の最高機関たる国会の討論が、現実に、あの“魔法の二言”で簡単に乗り切れてしまうようなものだとすれば、話は別。それなら確かにシャレにならない。あれ、もしや…】

【参考】法相?えーっ何で俺が…柳田法相の発言要旨

【柳田法相が14日に広島市で開かれた法相就任を祝う会合での発言要旨は次の通り。

 「9月17日(の内閣改造の際)新幹線の中に電話があって、『おい、やれ』と。何をやるんですかといったら、法相といって、『えーっ』ていったんですが、何で俺がと。皆さんも、『何で柳田さんが法相』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない。触れたことがない私が法相なので多くのみなさんから激励と心配をいただいた」

 「法相とはいいですね。二つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。これはいい文句ですよ。これを使う。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。『法と証拠に基づいて、適切にやっております』。この二つなんですよ。まあ、何回使ったことか。使うたびに、野党からは責められ。政治家としての答えじゃないとさんざん怒られている。ただ、法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話。法を守って私は答弁している」】

 国会の答弁は「ジョーク」なんて言葉で済ませられるものじゃないでしょ、アホ新聞。柳田は能力も経験もないのに大臣などという重要な役職を引き受けて、勉強するでも真摯に対応するでもなく、「その場さえしのげれば後はどうでもいい」というような態度で今まで政治をやってきたという事なんですよコレは。目くじら云々というどころか政治家として極めて不謹慎、大臣としての資格などもはやないと言えましょう。そもそも日本人にはジョークの文化なんてありませんよ?

 柳田はもとより、今後は菅や仙谷の任命責任も間違いなく問われるでしょう。しかし民主党の政治家は、どんな不祥事であっても「職務を全うする事で責任を果たす」とかいう魔法の言葉で簡単に乗り切れてしまうようでして(笑)。自民党政権の頃は「失言をした政治家は即辞任だ!」くらいの勢いで息巻いていた公正中立のマスコミ先生方も、最近イヤに大人しいんですよね…あれ、もしや…?

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