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2010年11月30日

東京新聞コラム11/30~無神経な大人

東京新聞「筆洗」11/30付

【絶望を戒める中国の言葉がある。<小舟が転覆しないうちになぜ身投げをするのか>。世界を驚かせた奇跡の生還劇は、少年たちが生きる希望を捨てなかったからだろう▼ニュージーランド領トケラウ諸島沖の南太平洋で、十月上旬から行方不明だった十四~十五歳の少年三人の乗ったボートが、約千三百キロも離れたフィジー沖で漁船に発見された。家族も生存をあきらめ葬儀も営まれていた▼持っていたココナツを食べ尽くし、約六十日の漂流中に口にしたのは運良く捕らえた一羽のカモメだけ。雨水もなくなって、最後は海水を飲み始めていた▼三人は気心の知れたいとこ同士だったという。くじけそうになっても、お互いに励まし合って、近くを通る船を待っていたのだろう。人間に備わっている生命力の強さを、あらためて思い知らされた▼日本ではいま、小中学生の自殺が毎日のように報じられている。陰湿ないじめに押しつぶされ、自ら命を絶つ心の中を思うと胸が締め付けられる。いじめが殺すのは子どもの心だ。心を殺されてまで行く価値がある場所なんてない。それを親も教師も分かってほしいと願う。一時的に学校をやり過ごしてもやり直しはできるのだから▼絶望はいつかは希望に変わる。つらいときは、小舟にしがみついて、最後まで海に身を投げなかった少年たちがいたことを思い出してほしい

 …仮にこの文章を、今現実にいじめに苦しんでいる子どもたちに読ませたとしたならば、おそらく多くの子どもたちがこう言うんじゃないかと思うのですよ、「絶望が希望に変わるまでって、いつまで待てばいいの?」と。

 中の人は「いい話が書けた!」などと自己満足していそうな気がしますけれど、今救いを求めている子どもたちにとって、これがプラスになるとは私には思えないんですよね。うつ病の患者さんに対しては「励ましは禁物、必要なのは理解と共感」なんて事を言いますけど、私個人としては、いじめの被害者のメンタリティってのはこれに近いんじゃないかと。誰だってカッコイイ文章を書いてみたいものですけど、曲がりなりにもそれでメシを食ってる皆さんは、もう少し「受け手」の事も考えて文章を作るべきなんじゃありませんでしょうかね?

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