朝日新聞社説12/18~防衛大綱決定―新たな抑制の枠組み示せ
【政権交代後初めての「防衛計画の大綱」が閣議で決定された。中国の軍事動向への警戒感を色濃くにじませるとともに、脅威には軍事力で対応するというメッセージを前面に打ち出した。
東アジアの情勢は不安定さを増しつつあるとはいえ、「脅威に直接対抗しない」としてきた抑制的な路線から、脅威対応型へとかじを切った意味合いは重大である。中国を刺激して地域の緊張を高める恐れがあるばかりか、「専守防衛」という平和理念そのものへの疑念を世界に抱かせかねない。
新大綱は単なる計画文書ではない。日本が発信する重い政治的なメッセージと、国際社会は受け止めるだろう。そのことへの鋭い意識が菅政権にどれだけあったのか、疑わざるを得ない。
新大綱は長く継承してきた「基盤的防衛力」に代えて、「動的防衛力」という概念を採り入れた。自衛隊の機動性や即応性を高める。とりわけ装備の「活動量を増大させ」、日本の高い防衛能力を「明示しておく」ことが地域の安定に寄与するのだという。そういう効用も否定はしないが、ものごとには両面がある。
周辺諸国の目には、日本が軍事的な自制を解こうとしていると映らないか。東アジア地域の不安定要因には決してならないという路線を転換し、危うい歩みを始めたと見られないか。
軍事は政治や外交を補完する機能の一部にすぎない。軍事力を外交や経済・開発援助と組み合わせ、事態が悪化するのを防止する「紛争予防」の発想が、新大綱には乏しい。
外交力は特に大切だ。日中の防衛交流や信頼醸成措置は中断したままだが、米国は粘り強い外交交渉を重ね、台湾への武器輸出をめぐり途絶えていた米中軍事交流の再開にこぎつけた。
鳩山由紀夫前首相は昨年、「東シナ海を『友愛の海』にしたい」と語り、菅直人首相も先月の首脳会談で「戦略的互恵関係」の推進を確認したが、外交と軍事がばらばらとの感が深い。
防衛大綱の枠を超えた総合的な国家戦略を立案する必要性を痛感する。
今回、武器輸出三原則の緩和を明記することは見送られた。時間をかけ慎重に議論を重ねるのが賢明だろう。
新大綱の策定には、文民統制の立場から政治の強い指導力が期待された。政権交代こそ究極の文民統制とも言えるからだ。しかし、根幹の議論を民間有識者に任せるなど、総じて政治が深くかかわった印象は薄い。
新たな防衛力の整備は今後、具体的な組織再編や運用見直しの段階に移る。意図せぬ摩擦を避けるためにも、菅首相は中国を含む国際社会に、新大綱が専守防衛を逸脱するものでないことを丁寧に説明しなければならない。
自衛隊の運用や予算に新たな抑制の枠組みを創出することも急務である】
東京新聞社説12/18~新防衛大綱 軍拡の口実を与えるな
【新しい「防衛計画の大綱」は、機動性を重視する「動的防衛力」の概念を取り入れた。国際情勢の変化に応じた防衛力の見直しは必要だが、周辺国に軍拡の口実を与えることになってはならない。
動的防衛力は、日本に「力の空白」が生じて周辺地域の不安定要因とならないよう、全国に部隊を均等配置してきた「基盤的防衛力構想」に代わる概念。テロや離島への侵攻などに対処できる機動性や即応性を重視して、必ずしも均等配置にこだわらない考え方だ。
動的防衛力への転換は、一九七六年の最初の防衛大綱以来続いてきた日本の防衛政策を根本から変えることになる。
基盤的防衛力構想は、ソ連崩壊で脅威が薄れた後も北海道に戦車を重点配備するなど硬直化も指摘されてきた。中国の台頭など国際情勢の変化に応じて防衛力の在り方を見直すことは当然といえる。
一方、この構想は日本の防衛力整備を必要最小限にとどめる歯止めとなってきたのも事実だ。
新大綱に基づく新しい中期防衛力整備計画では、中国の海洋進出を念頭に、沖縄など南西地域の防衛体制強化を盛り込み、自衛隊の空白地帯だった離島にも部隊を新たに配置する方針を加えた。
国土防衛は自衛隊の任務ではあるが、これまで部隊を置いていなかった場所に配置するとなれば、中国が警戒感を強め、軍事力強化を促す「安全保障のジレンマ」に陥る可能性がないとはいえない。
地域の安定を目指すための新大綱が、不安定要因をつくり出すようなことになれば本末転倒だ。中国が新大綱を軍備拡張の口実としないように日本側の意図を説明するなど外交努力も必要だろう。
新大綱は、領土・経済権益をめぐる対立など武力紛争に至らない「グレーゾーン」の紛争への対応も想定する。しかし、憲法九条で許される自衛権の発動は「急迫不正の侵害」に限られており、自衛隊の運用は、海上保安庁など警察力が対応すべき領域にまで拡大されるべきではない。
新大綱は昨年策定される予定だったが、民主党への政権交代で一年間延期された。時間が十分あったにもかかわらず、国会での安全保障をめぐる論議は低調だった。
その結果、政府の有識者懇談会が八月にまとめた安全保障に関する報告書の考えをほぼ踏襲する形となった。シビリアンコントロール(文民統制)の観点から国会でのより深い論議が欠かせない】
「中国の軍拡が不安だからそれに備えよう」というのが新大綱の入り口なのに、何で「中国を心配させてはならない」というような論調になるんですかこのアホサヨクどもは。上の文章の「日本」と「中国」の文字を入れ替えて、そのまま中国様に突きつけてやったらいかがなんです?
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