東京新聞社説6/8~よそはよそ、うちはうち
【ドイツのメルケル政権が二〇二二年までの原発全廃を閣議決定した。来月にも法制化される。東日本大震災後も原発維持が大勢を占める国際社会への重い問いかけと受け止めたい。
原発に依拠しない国としてはすでにオーストリアやデンマークなどの例があるが、欧州経済の牽引(けんいん)車たるドイツの決断が国際社会に与える影響は遥(はる)かに大きい。
閣議決定の内容は、現在十七基ある原発を二〇二二年までに全廃するのが主眼だ。東日本大震災後八基はすでに停止しており、残る九基を順次廃炉してゆくことになる。
この間、風力、太陽光など自然エネルギーの発電、送電技術開発を集中的に進め、総電力に占める割合を二〇年までに35%と倍増させるという。
ほぼ十年前、社民党と緑の党のシュレーダー連立政権時に決定された路線へ保守系の現連立政権が復帰することで、ドイツの脱原発への意思は収斂(しゅうれん)したといえる。
今後最大の課題は、「政策の急旋回は感情論に強く影響されている」(ツェッチェ・ダイムラー社長)との産業界の懸念をどう払拭(ふっしょく)するかだ。企業の海外移転や、電気料金の高騰、雇用への影響を懸念する声は強い。火力発電への依存度が高まり、環境悪化をきたす可能性がある。
石油ショックに際していち早く先進各国が省エネ社会に構造転換したように、ドイツが他国に先駆けて持続可能な自然エネルギー社会型モデルを築けるか。回復基調にある景気を背景に国家威信をかけた試みが始まる。
ドイツの脱原発政策については、自国で原発を廃止しても、隣国の原発大国フランスなどから電力を輸入できるではないか、という批判が常にある。他国の電力を自由に融通しあえる欧州にあって可能な選択であるのは事実だ。
その点に関してメルケル政権が諮問した倫理委員会報告は、「撤退は、将来ドイツから起こり得る原発の危険性をなくすために必要である」と述べている。原発事故による惨禍を、少なくとも自国から招く道を閉ざすドイツ固有の意思表明だろう。
理念を提示して、そこから現実性を探る。それがドイツ流だとすれば、原発廃止を党是に掲げた緑の党発足から三十年。連邦と州が曲折を経つつも試行錯誤を重ね一つの選択に至ったプロセスから学ぶべきものは多い】
ドイツの脱原発の動きを東京新聞が小躍りして喜ぶのはまぁ理解できます。ただ、日本とドイツとでは国土を取り巻く環境が全く異なるという点について、私たちはしっかり留意するべきでしょうね。
昨日の記事でも紹介しましたが、6/7付の東京新聞1面コラムには「将来のエネルギー政策を国民が判断するにあたり、原発や自然エネルギーのメリット、デメリットを徹底的に議論しよう」というような一文があります。普段東京新聞には批判的な事しか書いてない私も、これには全面的に賛成です。ですが、上の社説はメリット・デメリットを論ずるものというよりかは「日本もドイツを見習え!」と言っているだけに過ぎないように思われます。あくまでも「よそはよそ、うちはうち」であって、その違いを解せずに短絡的な事を言うのはただのバカ、理解した上ですっとぼけているなら読者を欺こうとする「ペテン師」というヤツですよ?
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