毎日新聞社説7/13~全頭検査とか言う前に
【福島県南相馬市の畜産農家が出荷した黒毛和牛から、国の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された。同じ農家が出荷した別の牛の肉は、一部が既に消費されていた。継続的に大量摂取しなければ健康に影響はないというが、規制値を超える食肉の流通を許したこと自体が、検査を担う県の失態だ。チェック体制の不備を早急に改める必要がある。消費者の不安を解消するとともに、いたずらな風評被害を防ぐには、国の支援も不可欠だ。
問題の肉牛を出荷した農家は、東京電力福島第1原発事故に伴う緊急時避難準備区域内にある。県は、この区域と計画的避難区域から出荷される肉牛全頭について、体の表面の放射線量を検査している。しかし、肉そのものに関しては、解体処理する出荷先自治体のサンプル調査に任せていた。
今回のようにエサなどから内部被ばくしている場合、肉そのものを検査しなければ、チェックできない。県はエサの内容を含めた飼育状況についても、農家の申告を聞き取るだけで済ませてきた。中途半端な検査体制が、県産品の安全性を疑わせる事態を招いたともいえる。
再発防止のため、福島県は両区域の肉牛農家を対象に、緊急の立ち入り調査を始め、出荷する肉牛については、内部被ばくも含めた全頭検査を実施するという。消費者に安心を与え、風評被害を防ぐためにも、必要な対応と考える。
しかし、全頭検査は、簡単ではなさそうだ。県外で解体・食肉処理する分については、先方の自治体に検査を要請するが、受け入れ側も検査機材や人員などに余裕がない。自治体間の協力では限界があり、国の支援が欠かせない状況だ。鹿野道彦農相、細川律夫厚生労働相は、ともに支援の意向を表明した。全頭検査実現のため、関係自治体と具体策の詰めを急いでほしい。
今回の問題は、被災地の農家にも大きな衝撃を与えた。福島県は、検査体制が整うまで、対象区域の農家に肉牛出荷の自粛を求める。消費者の安全・安心を考えれば当然のことだが、震災と放射能の危険にさらされながら、安全な牛の飼育を目指してきた農家の落胆は大きいだろう。
しかも、「出荷が可能になる時期のめどは立たない」(県農林水産部)という。農家の意欲が失われないよう、検査体制の整備とともに、出荷できない農家への補償も急ぐ必要がある。
出荷可能になっても、土壌に放射性物質が残ったままでは、エサになる牧草や稲わらを採取できない。営農継続には、除染作業が不可欠であり、国の迅速な対応が必要だ】
福島の肉用牛から国の基準を超える放射性セシウムが検出された件については、今日は毎日の他に読売・産経・東京などが社説に取り上げています。しかしその中で変態毎日が他社と一つ異なるポイントは、今回の事件の一因である「肉牛を出荷した畜産農家が農水省の指導を無視して、放射能に汚染された稲ワラを飼料として牛に与え、また聞き取り調査にも正直に答えなかった」という点を、文中ではっきり示していないところでしょうか。
生産農家の側に「原発問題」という酌量されるべき事情があることは判りますし、国側の対応も甘かったと言わざるを得ないでしょう。しかし「食の安全」という問題について、まず責任を負うべきはやはり生産者であり、ルール違反からウワサが現実のものとなってしまうような事態を招いたことは厳しく批判されなければなりません。加えて、それを正しく伝えない報道機関も同罪とみるべきでしょう。「規制値を超える食肉の流通を許したこと自体が県の失態」「国の迅速な対応が必要だ」などという文章は責任転嫁ともとれるのですが?
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント