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2011年7月27日

東京新聞コラム7/27~目糞鼻糞

東京新聞「筆洗」7/27付

【ミステリー小説の醍醐味(だいごみ)は、決定的な証拠を隠し、罪を消し去ろうとする犯人と追い詰める捜査側の激しい攻防だろう。密室での証拠隠滅工作が複雑かつ巧妙であるほど、作品の完成度は高く、読み手を引き込む▼「完全犯罪」を目指して、さまざまなトリックが繰り出されるが、捜査をかく乱する特別な狙いでもない限り、衆人環視の中で証拠を隠すような間抜けな人物や組織はまず出てこない▼それがどうだろう。中国浙江省温州市で起きた高速鉄道事故では、メディアや地元住民が見守る中、最も重要な先頭車両という「証拠」が粉砕された上で、埋められてしまった。原因究明に必要な証拠の保全を無視する態度は、国際的な信用をどれだけ失墜させただろうか▼インターネットで「証拠隠滅工作では」との批判にさらされた調査チームは、慌てて先頭車両の残骸を掘り起こしたが、政府批判は強まるばかり。共産党中央宣伝部は「否定的な報道をしないように」との通達を国内メディアに出すなど、引き締めに躍起らしい▼猛スピードで追突した列車が高架下に転落してから、運転再開までわずか三十四時間。地元の運行責任者だけを更迭、惨事がなかったかのように復旧を急ぐ姿勢に驚かされる▼公表された「落雷説」を疑う声も多い。「天災」を強調するだけでは、守りたい国の威信など軽く吹っ飛んでしまう】

 ここで改めて東京新聞をはじめとする日本のメディアに言っておきたいのは、政府や犯人のみならず、情報の伝え手までもが証拠や罪の隠蔽に加担すれば、読み手は正確な判断が全くできなくなるという事です。中国政府について「間抜け」「国際的信用が失墜した」と断じるのはまっことその通りですけど、日本のメディアもそんな偉そうに物を言える立場ではないという事は、ゆめゆめお忘れになりませんように。今はインターネットのお陰で、そうした「伝え手側の悪事」も比較的出てくるようにはなりましたが、事の重大性よりも自分らの都合を優先するような連中にジャーナリズムなんてものは存在しませんからね?

 …まぁ、メディアが公正中立な報道を行ったところで、「待て~い、菅ちゃんは~、総理大臣を~、やめへんで~!」などというような人間には痛くも痒くもなさそうなのですけど。国の威信なんてアレにはあったもんじゃないですね。

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