東京新聞コラム8/20~「電力は足りている」と言えますか?
【きのうの朝、通勤電車から降りると空気が変わっていた。電車に揺られていた三十分ほどの間に夏の熱気は消えた。やがて空から滴が落ち始め涼しい一日になった。「電気予報」が気になった今年の夏も、暑さの峠はどうやら越えたようだ▼都心でも三六度を超す猛暑日だった十八日、東京電力の最大使用電力は今年最高の四千九百三十六万キロワットに達したが、供給力に占める使用率は90%にとどまった。こんなに余裕があるのかと驚いた▼自動車業界などの「輪番操業」や家庭や個人の節電努力、七月下旬から涼しい日々が続いたことも、消費電力の削減に大いに貢献したが、もともとの電力需要の推計はかなりお粗末だった▼資源エネルギー庁は東京電力の推計を基に、夏のピーク時の需要予測を発表している。そこで示された平均的な「家庭像」は現実離れしている。かなり大型のエアコンが二・六台稼働し、家庭用最大級の冷蔵庫が通常使う電力使用量の倍以上を消費することに▼三分の一の家庭では、ペットのために留守中でもエアコンを使うと想定している。こんな水増しした数字で電力危機を訴えたのは、原発維持のためと疑われても仕方ないだろう▼以前、「原発に固執する『電力不足キャンペーン』を見極めたい」と書いた。この夏、私たちが見極めたのは、原発に頼らなくても生きていけるという現実だ】
まず一言言わせてもらいますけど、今夏の最大使用電力が、それでも供給力の90%の使用率にとどまったのは、電力会社が運転できない原発の電力を補うために使用してなかった火力発電所まで稼働させたり、多くの国民が地道な節電を行った賜物です。「こんなに余裕がある」のではなく、万が一を避けるべく、皆が暑さや不便なのを我慢して協力した成果なのです。そうした努力を、反核に固執して「原発は必要ないキャンペーン」を日々繰り広げている連中に、「原発なんかなくても大丈夫だと見極めた!」などと軽々しく言ってほしくはないものです。そもそもアンタらは節電について何をしたと言うのです?
それにこれまでアンタらは、原発事故について「千年に一度の事態でも想定するべきだ!」と訴えていたではありませんか。ならば、電力需給についても同じように「千年に一度の電力使用量」を想定して臨むべきではないのでしょうか。これは「現実離れ」とかそういうものではなく、アンタら自身が撒いてきたタネですよ?「国民皆が節電すれば電気は足りる」などと、それは一般的に「足りている」とは言いませんよね。
今夏はまだ終わってはいませんけど、上の電力需給に関する数字は、震災復興の本格化もまだこれからという時期、天候の気まぐれも相まっての結果とみるべきでしょう。陸上競技なら公式と認められず、参考記録で終わるところではないですか?そんなものを元に東京新聞は「現実を見極めた」などと、アンタらは自分たちにとって都合のいい数字を振りかざしているだけです。むしろ「もっと現実を見ろ」と言わせて頂きたい。
本当に最近の東京新聞を見ていると、被災地の復興や被災者の生活再建、それに事故を起こした福島の原発を含む、運転を止めた原子炉を安全に冷却するのにも電力が必要だという現実が、スッパリ思考から抜け落ちているような気がしてなりません。被災地復興で今以上に電力使用量が増えるとか、「現状で原発に頼らなくても生きていける」という前提が狂うような事態が起きそうなものなら、被災地の復興などさせないとか、あるいは風力発電や太陽光発電で我慢しろとか、そんな事まで言い出すんじゃないかとも思っています。このところ東京新聞の社説を取り上げては繰り返し述べている事ですけど、今国民が一致団結して対処するべきは「被災地の復興」という現実の問題であす。「エネルギーの転換」という未来の問題は、それが片付いてから改めて取り組みを行っても、決して遅くないのではありませんかな?
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