東京新聞社説9/29~現実から目をそらしているのは
【日本経団連が三十日、民主党と政策対話を行う。東日本大震災で失った雇用をどう回復するか。原発事故で揺らぐ電力供給をいかに立て直すか。脱原発から目をそらしては実のある対話は望めない。
経団連が「成長戦略2011」-民間活力の発揮による成長加速に向けて-と題する震災復興の提言をまとめた。岩手など東北三県で十五万人もの人たちが職を失った。なお約七万人が失業給付に頼らざるを得ない厳しい生活を強いられている。
日本の就業者は六千二百万人、その七割が企業で働く。経団連は大手企業千三百社などで組織され、日本の重要な一員として雇用創出を担う役割がある。「民間活力の発揮」は民主導で挑むとの宣言と前向きに受けとめたい。
経団連は産業を集積して雇用を生み出すため東北を復興特区に指定し、新規立地の工場などに資金支援や法人税減免などを講じるよう政府に求めている。今や日本のライバルとなった韓国は、新規に進出した外国企業の法人税を五年間ゼロの優遇策を法制化済みだ。
政策対話には民主党から輿石東幹事長や前原誠司政調会長らが出席、経団連は米倉弘昌会長を筆頭に外資も東北に呼び込める特区の早期実現を求めるという。東北を復興させ、その成果を広く全国にも波及させるよう期待したい。
解せないのは、政府がポスト福島のエネルギー政策を白紙から見直すというのに、経団連がエネルギー政策の大転換を視野に産業の将来像を描いていないことだ。
野田佳彦首相が脱原発を後退させたためか、原発の再稼働を強く求める一方で、風力などの再生可能エネルギーには触れていない。
米倉会長は菅直人前首相が再生エネの大量導入や脱原発の方針を表明するたびに、電力の安定供給が損なわれると批判してきた。
なぜ再生エネを世界をリードするビジネスに育てないのか。雇用も呼び込めないではないか。原発は一基で兆円単位。再稼働を求める電力業界に逆らえば商機を失いかねないとの計算が働いたのだろうか。
脱原発を宣言したドイツで原発事業からの撤退に踏み切るシーメンス社との落差は大きい。「電力会社を保護する態度が許せない」と、経団連を脱会した楽天の決断をつぶさに検証した形跡もない。
脱原発を願う多くの国民に耳を傾けず、経団連に加盟する企業の都合ばかりを代弁していては、国民との距離が遠のくだけだ】
経団連という団体を好意的に捉えている一般市民ってのは、おそらく少数なのではありませんでしょうか。何しろ「時の政権にすり寄り、利益のためなら親兄弟も国も売る、下々の事など知ったこっちゃない」というイメージが強い(というか、それしかない?)団体ですから(笑)。この震災の後処理でまだまだ日本が大変な時期に「法人税を減税しろ」だの「TPPに参加しろ」だのと、その主張は国民が理解に苦しむものばかりです。まして現米倉体制は売国民主党政権を支援しているという点において、経団連自身の性質とも相まって「歴代最悪」と言っても過言ではないかも知れません。
ただ、そういう性質の連中だけに、経団連が将来の電力の安定供給や自然エネルギーのビジネスとしての収益性に疑問を抱いているという事の意味を、東京新聞をはじめ反原発派はよく考えるべきではないでしょうか。反原発派が口にするほど、再生可能エネルギーを十分な雇用が見込めるほどの一大産業に育てるまでの道のりは楽ではなく、時間も必要です。また、原発即時停止派以外からの「電力の安定供給が損なわれるのではないか」という疑問について、反原発派からその疑問を払拭できる明確な回答が出てきたためしはおそらくありませんでしょう。これでは経団連でなくとも、エネルギー政策の転換に不安を覚えるのは当然というものです。
確かに、原発事故にまだまだ収束の気配が見えない中、国民の多くは脱原発を望んでいる事でしょう。しかしそれは「将来的には原発からの脱却を目指すが、代替エネルギーが十分確保されるまでは安全性を高めながら原発も利用する」という「現実的な原発脱却論」が中心であり、「原発即時停止論」は声は大きいだけで決して多数ではないと思われます。東京新聞はその違いを無視し、自分の都合ばかり記事にしているようですが、エネルギーの転換という国民を巻き込む一大事において、そういうやり方では国民の理解を得る事はできないでしょう。以前にも書いてますけど、他人に「脱原発」を押し付けて「中身はお前らで決めろ」ではなく、自ら脱原発のための現実的な道筋を示す事こそ、脱原発を主張する連中の責務なのですから。
そもそも、脱原発派が語る「脱原発→次は自然エネルギー」という話の流れが、イマイチ納得しかねるんですよね。単に脱原発というだけなら、これまで原発で作ってきた電力を既存の発電所に振り分けて賄えばいいわけで、自然エネルギーという新たな手段に頼らなくてはならない理由はないのですから(現に震災後はそうやって凌いできたワケですからね)。従来の発電方法を拡充するだけなら、電力の安定供給等の問題も(少なくとも自然エネルギーに頼るよりは)改善されると思うのですけど。どうにも昨今の自然エネルギー騒ぎには、利権だの何だののニオイが感じられてなりません。
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