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2012年2月 8日

これは壮大なツンデレ劇か?

香山リカのココロの万華鏡:「人類戦士」たち /東京

【診察室でしばしば聞くふたつの言葉に、「生きていて申し訳ない」と「私は生きる価値がない存在です」がある。「うつ病で退職してしまったから」「学校になじめず引きこもりになったから」「ついに生活保護を受給することになったから」など理由はさまざまだが、要は病になってバリバリ働いたり自分の力で生活できなくなったりした自分は、生きる意味も価値もない、と考えての言葉なのだろう。

 「いや、そんなことはないですよ」と言いながら、私はいつも「でも、その理由をうまく説明するのはむずかしいな」と感じていた。「病気なんだから、働けなくても仕方ないですよ」ではなんとなく弱い。

 そんな中、またまた読書を通して目をひらかれる経験をした。その本とは、重症心身障害児施設びわ湖学園で長く働く小児科医、高谷清氏が昨年、出した「重い障害を生きるということ」だ。その中で高谷氏は、自分ではまったく身体を動かすことができない、いわゆる“寝たきり”の障害児たちを、あるアニメになぞらえて「人類戦士」と表現している。ある生物種が死滅せずに存在し続けるためには、絶えず変貌を遂げて行く必要がある。その変貌の過程では、どうしても「障害」を持つ個体が生まれることもある。だから、障害児は人類の障害を引き受けてくれている「人類戦士」だ、と高谷氏は言うのだ。

 これは、心身障害児に限ったことではないはずだ。たとえば、企業の中で激務を強いられ、うつ病になった人がいた。その企業では、彼の長期休職がきっかけとなり、全社的に働き方を見なおすことになり、メンタルヘルス対策の仕組みが整えられることになった。子どもの引きこもりの背景には、両親やきょうだいを含むその家庭全体の問題があることも多い。そう考えれば、彼らもいまの社会の問題を一身に背負っている「人類戦士」なのだ。もし、こういう人たちがいなければ、私たちは「このやり方で間違っていないのだ」と傲慢になって暴走し、結果的にはより多くの人たちが苦しむことにもなりかねない。

 心の病になった人。あなたは、いまの社会に警告を発し、いろいろな問題を訴えようとしている大切な存在なんですよ。あなたは弱いから病になったわけではなくて、世の中の問題を誰よりも早く察知できる、敏感な人たちなんです。だから、「私には意味がない」なんて言わないで……。今度、診察室で「生きていて申し訳ない」と言う人がいたら、こんなことを伝えたいが、うまくいくだろうか】

【参考①】橋下徹vs香山リカ「アナタは病気」場外舌戦!(1)次の「敵」を見つけた橋下氏(抜粋)

〈香山氏は、一回も面談もしたことがないのに僕のことを病気だと診断してたんですよ。そんな医者あるんですかね。患者と一度も接触せずに病名がわかるなんて。サイババか!〉

 橋下氏に槍玉にあげられたのは、精神科医で立教大学現代心理学部教授の香山リカ氏だ。

 橋下氏が勝手に診断されたと騒いでいるのは、香山氏が共著者として名を連ねる「橋下主義(ハシズム)を許すな!」(ビジネス社刊)の中の次のくだりと思われる。

 〈(バトルの構図で二者択一を迫る)ふるまい方というのは、(中略)ある種の危機や不安を抱いている病理のひとつの証拠だと思えてしまいます〉

 これが、〈診断〉なのか。本誌は香山氏に取材を申し込むと、こんなコメントを寄せてくれた。

 「“直接診ていない人”であっても、為政者や教祖など社会的影響力を持った人物本人やその人を受け入れる民衆について分析する手法が、精神医学の一分野として伝統的に存在します。それにのっとって、いわゆる『橋下現象』を分析してみたまでで、橋下氏という個人を診断したわけではありません。本人に頼まれてもいないのに、しかも無料で診断するようなサービス精神は私にはありません」

 香山氏は橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」が打ち出した「教育基本条例案」に一貫して反対の立場を表明してきた。先の市長選でも、平松陣営の応援演説にも立っている。

 多分に、橋下氏の香山氏に対する怒りの原因は別のところにあるように思えるが、香山氏は意に介することなく、こう続ける。

 「学者や識者の批判を拒絶する橋下氏は、少々批判されると黙っていられないほど繊細で脆弱な神経の持ち主なのかと、それこそ“診断”したくなってしまいます」

【参考②】橋下市長個人にではなく〈橋下的なもの〉に感じる違和感。本当に必要なのはリダンダンシーのある社会ではないか(抜粋)

現代社会では、これほど〈橋下的なもの〉が支持される。あるいはその「風」に乗って、橋下さんがさらに〈橋下的なもの〉を尖鋭化させていくのではないか。私は、その「現象」に危惧を覚えているのです。

 精神科医は本来、目の前の患者さんを診断し、治療するのが主な役目です。しかしもう一つ、患者さんが接する社会全体あるいはそこで傑出した存在となっている権力者や政治家について分析するのも精神医学の一つ役割であり、これまで内外の多くの精神医学者が取り組んできました。これは、社会精神病理学、歴史精神医学などと呼ばれています。

 つまり、私は精神科医として〈橋下的なもの〉の象徴としての橋下さんや彼を熱狂的に支持する人たちを分析し、その発言や行動に社会病理性を感じ、歴史との比較なども行いながら、警鐘を発したいと考えているのです

 民主主義に則った選挙の結果選ばれた橋下市長とその支持者を「病的」と指摘し、しかしそうした「病的な」人々を「いまの社会に警告を発し、いろいろな問題を訴えようとしている大切な存在」「世の中の問題を誰よりも早く察知できる、敏感な人たち」と語る香山リカ。ひょっとすると彼女は、本心では彼を応援していて、彼が熱く議論する姿をより多くの市民に見せたいがために、あえて汚れ役をかって出たとでも言うのでしょうか…?そうでなけりゃコイツは自分に都合のいい事しか言わないクズか、あるいはコイツ自身の心が病んでるんだわ。

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