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2005年11月30日 (水)

この本、買いますか?

 今年1月、本ブログの前身である「ときめき★MIDNIGHT」の日記で、とある1冊の本の批評を書かせてもらった事がありました。

 その本の題名は「絵解き5分間ミステリー」。扶桑社刊「5分間ミステリー」シリーズの新機軸として出された本です。そもそもこのシリーズは、いわゆる推理クイズを短編集のように仕立て上げたもので、多くても10数ページ程度の文章を読み解き、文中から犯人やトリックを推理していくという形式です。

 外国のある特定地域の気候や慣習などを知らないと解けないような問題も多いですし、それ以前に国語の読解力が必須なんですが、内容は割と良くできていて、その後類似本がごろごろ出版されておりました。

 んで、「絵解き5分間ミステリー」なんですが、こちらは文章ではなくイラストを見て、そこから状況を推理していくという趣向。パラパラ眺めてみた感じでは面白そうだったので、とりあえず購入してみたんですが、それはもう素晴らしい内容でしたよええホント。

 まず、この本のメインであり、推理の根幹であるところのイラストからして素晴らしい。何か「才能豊かなイラストレーターを採用」とか書いてあったんですが、正直ヘタクソと言う他に言葉がありません。

0511301 これは何の動物?

0511302 「ブーブークッション」って書いてなきゃ判んねーよ…。

0511303 家と太陽…子供の方がまだ上手いのでは?

 手がかりになりそうな物が描かれているのに、それが何だか判別できないなんてのはザラです。中には謎を解く重要な手がかりが、見開きになっているイラストのちょうど綴じ込みにあたる部分に書かれていて、どんなに本を開いてもそれが見えない、などという読者をおちょくってるとしか思えないものまであります。才能があるのかどうだか知りませんが、媒体の事を考慮できない絵描きなど失格ではないかと思うのですが。

 …とまぁ、絵描きからして既にそんな感じなのですが、文章の方はさらにステキな感じになっています。まずは以下、著者前書きからの引用をご覧下さい。

(前略、著者と8歳の甥との会話)
「ねえねえ、叔父さん、わかる?」と甥は訊きました。
「わかるって、なにがだい?」とわたしは訊き返しました。
 このやりとりからもわかるとおり、わたしはじつに飲みこみの速い人間なのです。わたしと甥の知性はまさに五十歩百歩。”才気煥発”という言葉は、わたしたち二人のためにあるといっても過言ではありません。(後略)

 8歳の子供と五十歩百歩だなんて…この人大丈夫でしょうか(ただの親バカ…もとい叔父バカという説もあり)。ちなみにこの著者、ローレンス・トリートっていう、エドガー賞を3度も受賞した元弁護士の作家だそうなんですが、それにしてもここを最初に読んでたら絶対に買わなかったよこの本…。

 …とりあえず、前書きですらこのように十分アブナイ感じなのですから、その後の内容も推して知るべしです(何しろ推理本なのですから!)。

 まず、犯人があまりに頭悪い。イラストで状況を示さなくてはならない都合もあるのでしょうが、現場に事件の証拠が残りすぎです。水などで濡れている部分があれば確実に踏み込んで足跡を残すし(シャワー中の事故死を装っておきながら、シャワー室に靴跡が残っている、なんてのもありました)、隠蔽工作とかそんなのはあったもんじゃないです。犯人が自分を捕まえてもらいたがってるとしか思えません。

 当然、クイズの解答も理不尽さや説明不足が多く目に付き、解説を読んだところでとても納得できないような問題はいくつもあります。アメリカではこの本はヒットしたようですが、これはとても「ミステリ」として受け入れられるものではないんじゃないでしょうか。

 (ここから具体例、一応ネタバレになるので伏せてありますが是非目を通して頂きたい)例えば「クリスマスの書店で殺人事件が発生。絞殺死体の上にはサンタの人形が置かれ、さらに死体の傍らには、犯行現場と全く同じ描写のある小説が残されていた」という問題。ここから著者は犯人と動機を推理しろ、というのですが、実は彼の解答は「犯人は小説を書いた作家、動機は小説の宣伝のため」。納得いきますか?しかも彼はこうも書いています「書店員には被害者を殺す動機があるでしょうか?」「いいえ、ふつう書店員は得意客を殺しません」納得できますか?その上クイズの問題には「被害者は自殺したのでしょうか?」なんて設問まであります。絶対ナメてる。(ネタバレ終了)

 さらに、いくつかの解答の一番最後で、いわゆる「事件の後日談」のようなどーでもいい話が語られるのですが、あれには一体何の意味があるのかと。例えば「事件を解決した探偵が夕食に招待された」とか「犯行を自白した女性が動機について『あいつの綺麗好きが我慢できなかった』と語った」とか「ワインセラーに隠れていた犯人が、見つかった時すこしばかり酔っぱらっていた」とか。

 一冊の本でたかだか数ページしか登場せず、それも次の問題になればさっぱり関係のない人間たちを、最後の最後でちょっとだけ味付けする事に何の意味があるのでしょう?クイズに集中したい身にとっては、ハッキリ言って必要ありません。。例えるなら牛乳を飲んだ後に水を飲まされるとか、そんな感じでしょうか。

 ホントーにこの本は「カネ返して欲しい」と思いました。読後にこれだけの不満を覚えたのは初めてだったかも知れません。なお、ここまでの文章を書くのに当時のログを見直して、件の本にももう一度目を通したのですが、改めて怒りがこみ上げてきましたので、ここまでの文章は当時の日記を参考に、大幅な加筆修正が加えられております(笑)。

 …それで今回、何故こんな話をさせて頂いてるのかと申しますと、何とこの「絵解き5分間ミステリー」の続編が出やがったんですよ。イラスト描きは替わりましたが、著者は前と替わらず。さすが扶桑社、そこにシビレるあこが(ry。

 まぁ、私はまだ途中までしか読んでいません(一応買いましたよ、一応ね)が、クイズの内容そのものは(前回に比べれば)若干マトモになっているような気がします。余計な後日談とかは相変わらずですがね。そしてこの著者、今回も前書きの中で寝言をほざいています。

(前略)この本に収められた作品の数々を、わたしはクイズではなく小説だと考えています。どの作品も一冊の本になるだけの骨組をそなえています。もうすこし話を複雑にして、事件の背景を詳しく描写し、原稿用紙にして三、四百枚ほど書き足せば、立派に一冊の本になるでしょう。(後略)

 …そらアンタ、どんな下らないストーリーでも、三、四百枚も原稿書けば本が一冊できるわな…。

絵解き5分間ミステリー 証拠はどこだ

 さぁ、ここまで長い文章に目を通して下さったアナタ、アナタはミステリはお好きですか?もしお好きでしたら、この本を手にとってみる勇気はありますか?一応忠告はしましたよ、忠告はね…。


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